環境にやさしい建設はどのように定義されるのか?-CO2パフォーマンス・ラダー-

 
年々厳しくなる建設業に求められる環境配慮。
しかし、だれが「環境に配慮している」と決めるのか。その基準を決めるのはだれなのか。疑問に思ったことはありませんか?
 
海外では、日本よりも建設業と環境の関わりが大きな注目を集めています。今回はオランダの脱炭素レベルの指標である「CO2パフォーマンス・ラダー」を紹介します。
 

目次

CO2パフォーマンス・ラダーとは?
「CO2パフォーマンス・ラダー」を導入するメリット
日本における類似の制度
おわりに
 

CO2パフォーマンス・ラダーとは?

まずはCO2パフォーマンス・ラダーはオランダの「SKAO*(Foundation for Climate Friendly Procurement and Business)」という財団が提供している脱炭素の認証レベルです。IKEA財団も協力してこの活動を推進しています。
 
SKAOが実際に行っていることは、「CO2パフォーマンス・ラダー」の活用、継続的な開発、認証スキームの管理、参加事業の拡大等、その他「CO2パフォーマンス・ラダー」に関する全ての事柄です。
 
SKAOは、CO2パフォーマンス・ラダーを導入した企業や政府に対し、気候変動に左右されないビジネス環境の実現を目指し、CO2削減を推奨しています。関係者をつなぎ、知識を共有するなどして、環境に優しい事業作成を助けています。
EUによる基準に合致しているので、EU圏内ではどこでも適応可能です。
 
*オランダ語の頭文字をとっています(Stichting Klimaatvriendelijk Aanbesteden & Ondernemen)
 

「CO2パフォーマンス・ラダー」を導入するメリット

CO2パフォーマンス・ラダーで認証を受けると、構造的で効果的なCO2削減システムを導入し、CO2削減を推進しているとして、市場での信頼力が上がり、公共事業の入札の可能性を上げることができます。
 
たとえば、ランクに応じて実際の入札価格よりも1~5%低い金額で札を入れたものと評価して、落札者を決める仕組みも導入されています。つまり、高額な工事を落札できる可能性が上がるのです。
CO2削減をした入札企業にとって落札は優位になり、企業の環境への意識が高ければ高いほど、落札のメリットも高くなります。
 
さらに現在、オランダとベルギーの200以上の公共機関(省庁や自治体など)が、入札プロセスにおいてCO2パフォーマンス・ラダーを使用しているそうです。
公的機関は公共事業を入札する業者が申請したCO2削減の活動が本当に実行されているのかを調査しなければなりません。しかし、それには大きな負担が掛かります。
 
CO2パフォーマンス・ラダーを使用すれば、第三者からの認証を受けていることが明らかなので、確認作業が必要なくなります。
 

日本における類似の制度

実は日本においても入札に関しては類似の制度があります。
 
国土交通書では、公共工事の入札において、参加企業がCO2の削減目標などを示して第三者機関の認定を取得している場合や、低炭素型の建機による施工実績を持つ場合に、「企業能力」の項目で加点するなど、インセンティブを付与しています。これによって、民間企業による脱炭素を促す効果が期待されます。
 
自治体レベルで見ていくと、例えば北海道は22年度から「北海道インフラゼロカーボン試行工事」に取り組んでいます。
施工者は工事の着手前にCO2の削減策を記載した計画書を提出し、その内容によって加点を受けることができます。低燃費型の建機の使用や、現場内に設置したソーラーパネルによる電力の活用などが評価対象です。
 

おわりに

公共事業における脱炭素推進は世界的な動きです。しかし「脱炭素」の定義やそれを決めるステークホルダーは違うようです。
脱炭素の動きが進む欧州。今後も動きを追っていくと、日本の行く末も垣間見ることができるかもしれません。
これまでも「環境」と「建設」に関する内容をご紹介しています。ぜひこちらも参考にしてください!