【事例】省エネに寄与する建材利用

近年の建設業界では、環境に配慮した建材が多く開発されています。
海外事例はこれまでにもいくつか紹介しましたが、今回は日本で行われている環境配慮の建材利用の事例をいくつかご紹介します。
 
 
目次
  1. 星野リゾートの新しいホテル「OMO7大阪」
  1. 創エネ外装を使った「ミュージアムタワー京橋」
  1. 外装クロスの耐久度を上げる塗料を使用した「上智大学新校舎」
おわりに
 
  1. 星野リゾートの新しいホテル「OMO7大阪」
OMO7大阪は白い外装が特徴です。
このホテルでは国内初の設計技術を採用し、ホテルを5265枚の「膜」で覆いました。
 
膜の招待は「フッ素樹脂酸化光触媒膜」(以下、外装膜)という建材を使用しており、外装膜は日射など外からの光のうち、78.5%を反射・拡散します。窓から客室内に入る日射量を通常より30~45%軽減できるため、冷房動作時に必要なエネルギー消費量を削減できます。
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00649/052600076/?P=2より)
また、外壁コンクリートから発生する輻射(ふくしゃ)熱を軽減する効果もあり、都心のビル街で発生する「ヒートアイランド現象」を軽減することもできるようです。
 
この技術は、日本設計と膜材開発などを手掛ける太陽工業(大阪市)、建築材料の製造・販売をする不二サッシが共同開発しました。3社は特許も出願しています。
 
OMO7は 外装膜の他にも、冷暖房負荷を抑制するLow-EガラスやLED照明といった省エネ技術を積極的に導入するなど、環境配慮を徹底しています。これらの動きが認められOMO7は現在、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)による第三者認証で、最高ランクの「ZEB Oriented」の認証を取得しています。
 
 
  1. 創エネ外装を使った「ミュージアムタワー京橋」
進化するガラス業界。これまでは断熱性能が注目されていましたが、断熱性能を高くするとメンテナンスコストが高くなる傾向があると言います。
そこで、省エネ性と快適性をさらに高めていくならば、日射取得性能も含めた窓のエネルギー性能(WEP)の認識を高めていくべきだという意見が出てきました。三協立山・三協アルミ社はその日射取得性能に注力した東京・京橋の超高層ビル「ミュージアムタワー京橋」(19年完成)を建設しました。
 
この建物は四方を6本の型材をユニット化した「組みルーバー」で覆っています。1つずつの型材はくさび形で、日射量や入射角度を計算して東西南北の面ごとに組み方を変えています。
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/na/18/00183/081800010/?P=2より引用)
この建材開発・利用には、イニシャルコストへの意識よりも、運用時の省エネ効果に注目する事業者の意識や、100年先まで使える最先端技術を盛り込んでほしいという発注者の希望があったようです。
 
  1. 外装クロスの耐久度を上げる塗料を使用した「上智大学新校舎」
東京・四谷エリア、新宿通り沿いに上智学院(東京都千代田区)の「上智大学四谷キャンパス15号館」が新設されました。
耐火木造の地上3階建てで、延べ面積は約478m2。北・東面の外装は上智大学が理念に掲げる「多様性」や「他者との交流」、「真理」、「伝統」が交差している様子を木製のクロスで表現しているそうです。
全体的に木材を使用しているため、紫外線や雨風などによって木材に変色や劣化が生じてしまうリスクもあります。これまでの技術では、メンテナンスの際に木材の腐食等が発生した場合、それに応じて部材交換が必要で、木材による建築は維持するのにコストがかかっていました。
 
こうした課題を克服するために、住友林業は独自開発したシリコン系超撥水(はっすい)形塗料「S-100」を外装の木材に塗布しました。
S-100は、信越化学工業のシリコーン技術を活用して住友林業が21年に開発した水性半造膜タイプの木材保護塗料だ。紫外線を散乱させつつ、水の浸入を軽減できるため、木材の灰色化や腐食を妨げます。
 
木材の耐久性を市販のものに比べて2倍にでき、最初のメンテナンスは5年後にS-100を再塗装し、そのあとは10年に1回再塗装するなどのメンテナンスをすればよくなります。
部材交換の必要はないようです。
 
おわりに
今回は日本で実装されている、環境に配慮した建材利用の事例を3つ紹介しました。
これまでは初期費用をなるべく安く抑えることが重視されていきましたが、今回紹介したような建材を仕様することで、初期費用よりも省エネを重視するようになりました。
ぜひ参考にしてください。