【リサイクル】廃棄プラスチックで作る建材ブロック

環境保全の文脈において必ず語られるプラスチックごみ問題。2021年の統計では、世界中で約63億トンものプラスチックごみが存在していると言われており、その対応が求められています(出典:7+ Revealing Plastic Waste Statistics (2021))。
 
実は建築業界においても、この問題に対処して環境保護を進めようという動きがあります。今回の記事では、廃棄プラスチックを素材として有効活用するために米国スタートアップが開発した技術 ”ByBlock” について紹介します。
 
 
目次
  1. なぜプラスチックのリサイクルは難しいのか?
  1. 廃棄プラスチックから作られた建材 ”ByBlock”
  1. 事前処理不要な製造プロセス
 

1. なぜプラスチックのリサイクルは難しいのか?

 
そもそも、プラスチックのリサイクルが進まない原因はどこにあるのでしょうか?
 
プラスチックの完全リサイクルが困難な要因の一つが、素材の混合です。一般的に、プラスチックごみは種類別に分別されずにまとめて回収されます。
 
リサイクルするためには素材の種類ごとに分離したり、洗浄などの前処理を行ったりする必要があります。
 
しかし、回収後の分離・前処理は技術的に難易度が高く、リサイクルするよりも廃棄してしまった方がコストがかからないことから、リサイクルがなかなか行われないという背景がありました。
 

2. 廃棄プラスチックから作られた建材 ”ByBlock”

 
プラスチックのリサイクルが困難とされている中、廃棄プラスチックを使ったブロックが注目されています。
 
廃棄プラスチックを使って作られた”ByBlocker”の写真
画像引用:ByFusion公式HP(英語)
廃棄プラスチックを使って作られた”ByBlocker”の写真 画像引用:ByFusion公式HP(英語)
 
米国ロサンゼルスに拠点を置くスタートアップ企業ByFusionは、廃棄プラスチックを使った建設用ブロック”ByBlock”を開発しました。
 
上の写真(ByFusion公式HPから引用)を見ると分かるように、様々な種類のプラスチックごみがブロック状に変身しています。
 
このようにブロック状にすることで、廃棄プラスチックを焼却・埋め立てするのではなく、建材として使用できるようにするというのがByBlockのアイデアです。
 

3. 事前処理不要な製造プロセス

 
ByBlockはその製造方法を工夫することで、プラスチックのリサイクルを困難にしている要因を上手く乗り越えています。
 
ByBlockは、独自の「Blocker」という製造ユニットを使い、廃棄プラスチックを蒸気と圧力で圧縮してブロック状に形成します。あらゆる種類のプラスチックを一気にブロック状に固められるため、事前の洗浄・分別処理が不要です。この手法を用いることで、廃棄プラスチックをより容易に再利用することが可能になります。
 
製造ユニットBlockerの写真 
画像引用:ByFusion公式HP(英語)
製造ユニットBlockerの写真  画像引用:ByFusion公式HP(英語)
 
形成されたByBlockは、原料がプラスチックなため防水性・耐久性に優れているという利点があります。一方で紫外線による劣化を受けやすいため、屋内で使用するか、屋外では耐候性材料と組み合わせて使用することが推奨されています。
 
またByFusionの経営方針として、自社工場のみでByBlockを加工するのではなく、製造ユニットであるBlocker自体を顧客会社に販売する方法を取っています。これにより、各地方における自足自給的な廃棄プラスチックのリサイクルが可能になるという利点があります。
 
最後に
これまでは完全リサイクルが困難と言われてきた廃棄プラスチック。今回の記事では、処理を工夫することで廃棄プラスチックを建材として利用できるようにする技術をご紹介しました。今後も新たな技術が開発され、建築業界として環境保全に貢献できるようになっていくことが期待されます。
 
参考