建設業に関わる法改正【2020年~2022年版】

日々改正されていく法律。
特に建設業は近年改正される法律が増えています。中には知っておかないと、「いつの間にか法に触れる行為をしていた!」なんてことも。
 
今回は2020年から現在までで改正された建設業に関する法律をいくつかご紹介します。
なお、違反した場合の罰則については、本記事では記載しておりません。

建設業法

2020年10月、建設業法は大きく改正されました。これについてはご存知の方も多いかと思います。建設業法改正の目的は以下の3つです。
①建設業の働き方改革の促進
②建設現場の生産性の向上
③持続可能な事業環境の確保
今回は建設業法で改正されたポイントをいくつかピックアップしました。
 
①働き方改革のための法改正
建設技能労働者の約半数以上が50代以上と、高齢化が進んでいます。
若い世代が建設業に従事しやすくなるよう、労働環境を整えていくことが喫緊の課題といえます。
そこで、建設業界では2024年4月1日から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されます。
上限規制の時間は月45時間、年360時間です。特別な事情がある場合でも、単月で100時間未満、月平均80時間以内、年720時間以内に収める必要があります※。これを受け、時間外労働の削減、育休取得の推奨、リモートワークの導入など、働き方の多様性を推進している事例が増えています。なお、無理な工期による時間外労働が矯正されることが無いよう、2019年(令和元年)には「建設業法及び入契法の一部を改正する法律」によって、「注文者に、著しく短い工期による請負契約の締結の禁止」(19条の5)が施行されています。
※復旧・復興に関わる業務の場合については、単月で100時間未満、複数月平均80時間以内の条件は適用されません。
 
②生産性向上のための法改正
就業時間を減少させるためには、作業効率を上げる必要があります。
 
2021年9月にはデジタル改革関連法の施行によって建設業法の第29条が改正されました。2001年4月に建設業法第19条が改正されたことで、書面での工事請負契約の義務が撤廃され、工事請負契約書の電子化と電子契約が可能となりました。さらに、今回の建設業法第29条の改正により、工事請負契約書の電子化だけでなく、工事請負契約前の見積書や追加工事に伴う追加・変更契約の電子化も可能となりました。
 
今後は「これまでやっていた書類仕事は本当に必要だったのか?」「この作業フローで良いのか?」「ITに頼れる部分はどこにあるのか?」など、現在の仕事の方法をより時間のかからない形で進められるように考えていかなければなりませね。
 
③持続可能な事業環境の確保のための法改正
建設業界の持続可能性を高めるため、許可申請制度や下請けを保護できるよう、法律の変更などが挙げられます。許可申請制度については、実際に事業を相続したり、会社分割などのM&Aで事業を承継したりするときにこうした改正ポイントに関する知識を押さえておく必要があります。
許可申請制度の変更事例としては、事業譲渡や合併、分割時の事前認可や個人事業主の相続時に死後30日以内における相続の認可手続きが挙げられます。どちらも旧法では事業体としては活動できる状態であっても、建設業許可が下りるまでは事業を継続できないという問題がありました。それを解消できる法律になっています。また、建設業者は、必ず「建設業許可証」を現場に置かなければなりませんでしたが、新法では元請けが掲示すれば良い、ということになりました。
さらに、下請けと元請けの権力差をなるべくなくすための法改正もされています。これまでは下請けが元請けの違法行為を密告したときに下請けが不利益を被るような可能性がありました。新法では元請けが、下請を不利益に取り扱うことを禁止しています。
 

道路交通法改正

2022年4月1日に道路交通法施行規則が一部改正されました。
道路交通法施行規則第9条の10(安全運転管理者の業務)で、安全運転管理者※の業務として以下のことが課せられました。
1)運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、当該運転者の酒気帯びの有無を確認すること。
2)上記の確認の内容を記録し、当該記録を1年間保存すること
2022年10月1日からは目視確認のほか、
1)アルコール検知器を使って運転者の酒気帯びの有無を確認する義務道路交通法施行規則
2)アルコールチェックの記録を一年間保存するのと同時に、アルコール検知器を常時有効に保持することの義務
※道路交通法では、一事業所あたり、業務に使用している自動車(白ナンバー車の自家用自動車など)を乗車定員11人以上の自動車1台以上、あるいはその他の自動車(トラックを含む)を5台以上保有している場合、安全運転管理者の選任が義務となっています。
 

大気汚染防止法

2021年4月1日以降、大気汚染防止法の規制がレベルが拡大されました。
それに伴い、アスベストに関する法改正が大幅に行われています。
アスベストは加工が容易で丈夫なために、以前は建材として頻繁に使用されていました。しかし経年劣化で飛散したアスベストによる健康被害が多く報告されるようになり、2006年からは労働安全衛生法施行令によって製造・使用等が全面的に禁止されています。
改正された点は以下です。
1)事開始前の石綿の有無の調査に関する方法の明確化と3年間の保存義務づけ
2)計画届の提出が必要となる建材レベルの範囲拡大
3)石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事に対する規制強化
4)一定規模以上の工事における工事開始前の労働基準監督署への報告義務
2023年まで少しずつ規制が強化されていきますので、厚生労働省の掲示を確認しながら対応して行く必要がありそうです。
さて、ここまで建設業に関わる、いくつかの法改正についてご紹介してきました。
この2〜3年だけでここまで変わっているとは驚きですね。本記事を参考に、実際の業務で参照すべき法改正に関する細かい規定を調べてみてください!