線路接近工事の事例と事前申請

 
工事現場においては、建設される建物のスペースだけではなく、その周囲に足場や重機が配置されるスペースも必要ですよね。それでは、電車の線路の周辺で工事を行う際には、工事設備の配置はどのように行われているのでしょうか?
 
今回の記事では、私たちの生活に身近な「線路」周辺において工事が行われる際に生じやすい線路近接工事と、その事例、および対策として実施されている鉄道会社への事前申請についてご紹介します。
 
目次
  1. 線路近接工事とは
  1. 過去の事故例
  1. 近接工事の着工前に必要な手続きは?
 

1. 線路近接工事とは

線路沿線で行われる工事のうち、列車運行に影響を及ぼす可能性のある範囲で行われるものを線路近接工事と言います。
 
こういった工事においては、列車や高圧電線への接触により人命にかかわる重大な事故の危険性が高いこと、また、工事設備の不具合によって長時間の列車運休が引き起こされる場合があります。

2. 過去の事故例

実際、これまでも線路近接工事において事故が発生しています。
 
JR西日本エリアにおいては、建設足場の東海による線路への侵入・電線への接触により、約25時間の遅延の発生、約120,000人に影響を与える事故が発生したようです。
線路近接工事の事故事例
画像引用:JR西日本 | 線路の近くで工事をされるみなさまへ(線路近接工事に関するお願い)
線路近接工事の事故事例 画像引用:JR西日本 | 線路の近くで工事をされるみなさまへ(線路近接工事に関するお願い)
 
またJR東日本エリアにおいても、高所作業車の転倒により線路に支障をきたし、約42,000人に影響を与えたという事案が発生しています。
線路近接工事の事故事例
画像引用:JR東日本 | 線路近接工事安全対策のお願い
線路近接工事の事故事例 画像引用:JR東日本 | 線路近接工事安全対策のお願い
 
いずれも、線路や鉄道設備と、建設に必要な足場・重機などの距離が近かったことで事故が引き起こされ、長時間にわたって多くの乗客に影響を与えてしまった事例と言えます。
 

3. 近接工事の着工前に必要な手続きは?

 
このように鉄道の運行に影響を与えるような事故を防ぐために、線路近接工事の着工前には、事前に鉄道会社と打ち合わせをする必要があります。
 
では、協議の申請から着工まで、どれくらいの期間がかかるのでしょうか?鉄道会社に鉄道会社により異なりますが、通常1~3か月、電線の防護など特別な処置が必要な場合は4~6か月かかるようです。
 
申請時には、現場写真や工程表などの他、図面や施工計画図も提出が求められます。これらの図では、仮設設備や重機配置などの作業範囲と、鉄道会社設備との離隔距離を明記する必要があります。
 
施工箇所・仮設設備からJR設備までの離隔距離の記載例
画像引用:JR西日本 | 線路の近くで工事をされるみなさまへ(線路近接工事に関するお願い)
施工箇所・仮設設備からJR設備までの離隔距離の記載例 画像引用:JR西日本 | 線路の近くで工事をされるみなさまへ(線路近接工事に関するお願い)
 
鉄道会社側と調整を重ね、場合によっては施工計画の一環として現場調査を追加で行い、着工が延期される可能性もあります。したがって、早めに申請を行い、協議を開始することが大切です。
 
最後に
線路近接工事では、作業員や乗客、周囲の住民の安全のために綿密な対策が取られていることをご紹介しました。今度、電車から工事現場が見えたら、施工前にどんな協議や安全対策が取られていたのかを想像してみるのも面白そうですね。
 
参考