建設業における労災保険と労災発生②

作成日時
2022/8/16
カテゴリ
経営
3K*労働のひとつと言われる建設業。業種ごとに労災発生状況を見ると、建設業の労災発生率は他業種と比較して高く、危険が伴う現場であることは否めません。
そこで、労働災害を減少させるために国や事業者、労働者等が重点的に取り組む事項を定めた中期計画(平成30年度~令和4年度)である「第13次労働災害防止計画」(以下「13次防」という。)の重点業種に指定されています(厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25944.htmlより)。
今回は建設業をとりまく労働災害について、近年の傾向をご紹介します。
建設業における労災にはどのようなものが多いのかを知ることで、小さな怪我や、生命の危機を避けられるかもしれません!
 
 
もくじ
建設業における労災発生率の推移
建設業における労災への対策
おわりに

建設業における労災発生率の推移

建設業は働き手の確保が喫緊の課題です。
そのためにも、「危険」な職であるというイメージを払拭する必要があります。国や業界団体は事故発生率の減少をめざし、情報発信や指導を入れることによって啓蒙活動をしてきました。
表1 建設業の死傷者数
(建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」(https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/statistics/occupational_accidents.html)および国土交通省「労働災害発生状況」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html)より筆者作成
この10年の死傷者数をみると、残念ながら全体の傾向としてはほとんど変わりがありません。とはいえ、2015年から2020年までは減少傾向でした。
しかし、2021年度の死傷者数は16,049人(前年比+7.4%)と、大幅に増加しています。また、全業種の死傷者数に占める割合は30.3%にもなります。これは大変高い割合だと言わざるを得ません。
業種別の死傷者数では、土木工事業が 4,277 人(前年比 314 人・7.9% 増、平成 29 年比 262 人・6.5%増)、建築工事業が 8,403 人(前年比 209 人・2.6%増、平成 29 年比 97 人・1.2%増)でした。
表2 建設業の死亡者数
(建設業労働災害防止協会「建設業における労働災害発生状況」(https://www.kensaibou.or.jp/safe_tech/statistics/occupational_accidents.html)および国土交通省「労働災害発生状況」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/index.html)より筆者作成
 
死者数に焦点を当てると、2012年からは79人(-21.5%)と減少傾向にありますが、前年比30人(11.6%)増加と、あまり芳しくない結果となりました。また、全業種の死傷者数に占める割合は38.2%で、かなり高い割合になっています。
業種別の死亡者数では、土木工事業が 102 人(前年比同、平成 29 年比 21 人・17.1%減)、建築工事業で 139 人(前年比 37 人・36.3%増、平成 29 年比2人・1.5%増)となった。
建設工事業は土木工事業と比較して、死亡者の数も、増加比率も依然として高いことが伺えます。

建設業における労災への対策

①墜落・転倒
建設業においてもっとも多い事故は「墜落・転落」です。
残念ながら、100%事故を防ぐことはできません。
だからこそ、墜落・転落が発生した場合、被害を最小限にする必要があります。
厚生労働省では、2015年、労働安全衛生規則を改正し、足場からの墜落防止対策を強化しています(詳細はこちらから→https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000081490.html)。
推奨されているフルハーネスの着用は、被害を最小限に抑えるために有効です。
厚生労働省「正しく使おうフルハーネス」より
 
転落しても、フルハーネスを着用していれば、体が安全帯から抜け出してしまうことをふせげるため、生身で地面に叩きつけられることはありません。
また、肩や腿、胸など、あらゆる箇所から体を支えることができるため、胸部・腹部を過大に圧迫するリスクを低減します。
厚生労働省「正しく使おうフルハーネス」より
 
 
②増加傾向の労働災害
近年、「動作の反動・無理な動作」(前年比 34 人・3.6%増、平成 29 年比 101 人・11.5%増)及び「転倒」(前年比6人・0.4%減、平成 29 年比 93 人・ 5.9%増)による労働災害は増加しています。
転倒についても、厚生労働省による「STOP!転倒災害プロジェクト」が取り組まれています。このプロジェクトで紹介されている対策を紹介します。
 
 
【設備面の対策】
  • 出入口周辺にゴムマットを敷く・床のすべりや凍結・踏み外し
 
【安全活動】
  • 職場内の「4S活動」4S = 整理・整頓・清掃・清潔
  • 職場に潜んでいる危険を見つける「KY活動」KY活動 = 危険予知活動「どんな危険がひそんでいるか」を話し合い、合意のうえに対策を決め、一人ひとりが着実に実践する
  • 危険の見える化・事前の情報共有・ステッカーや看板による安全意識向上
  • 身体機能の向上加齢による身体の機能低下を避ける
 
【作業管理面の対策】
  • 作業時の安全意識向上・時間に余裕をもって行動・滑りやすい場所では、滑りにくい靴を履き、小さな歩幅で歩行する・足元が見えない状態で作業をしない・つま先を持ち上げて歩く習慣をつける
 
使用する道具の点検を怠らず、安全に作業をできるように環境を整え、作業時は無理な姿勢は避けましょう!
 

おわりに

建設業は13次防において、「建設業、製造業及び林業については、死亡者数を2017年と比較して、2022年までに 15%以上減少」を目指しています。
しかし、労働災害は減るどころか、増加傾向にあります。死亡者も0にはなっていません。
前回は労災保険についてご紹介しましたが、あの保険は使用されないことが一番です。
仕事が原因で死亡するひとがいない、より安全な世の中になることを願うばかりです。
参考
  • 3K 「きつい、汚い、危険」といわれる労働環境の職業のこと。建設・土木、ゴミ処理などの肉体労働や、警察官や看護師、介護士など。