災害復旧で潤う(?)建設業界
災害大国、日本。
日本は地形、地質、気象等の面で極めて厳しい条件下にあります。
全国土の約7割を山地・丘陵地が占めており、急こう配の河川が場所が多いことから、山から海へと一気に流下しやすい地域です。そのため土砂災害などが多く発生します(国土交通白書https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1115000.html)。

土砂災害の発生時には多くの場合、堤防や橋、トンネル等の道路が崩壊します。
その場合、その復旧に関わるのは建設業の方々です。国や自治体にとっては大きな痛手の災害復旧。しかし、建設業にとっては大きな案件となります。
近年の土砂災害に対応している建設業の状況や、災害復旧に関する問題をご紹介します!
災害復旧に関する国庫補助
近年の災害復旧
災害復旧は特需?
災害復旧に関する国庫補助
日本で多く発生する災害には、国庫からの支援金が大量に投入され、補助率もかなり高くなっています。被災した地域を自治体の予算だけで賄うことは困難であり、この補助は生活を支える河川や道路の維持には必須です。
補助には原型復旧のための「河川等災害復旧事業」や、改良復旧のためのいくつかの補助があります。詳細は国土交通省から出されている『災害復旧申請の手引き』(https://www.mlit.go.jp/river/bousai/hukkyu/shinsei/1.html)をご覧ください。
近年の災害復旧
年々増える天災。どれだけ巨額の投資をしたとしても、次々と災害が襲ってきます。
災害が起こる場所は立地的にも危険な場合が多いため、ICT技術の導入にも積極的です。
日本三大秘境の1つにも数えられている宮崎県椎葉村では、砂防堰堤(えんてい)の新設を進めています。椎葉村には、2020年9月の台風で土砂災害が発生したため、急峻な斜面復旧が必要になっています。堰堤を築く場所は地すべり警戒区域や急傾斜地特別警戒区域で、40度強の傾斜角を持つ山で、施工途中の落石が予想されていました。そこで、旭建設(宮崎県日向市)がICT(情報通信技術)をフル活用して十分な安全を確保しながら、無人化施工を実施しています。(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02011/052400004/)
しかし、このような努力の末に復旧したとしても直後に復旧箇所が崩れる例もあります。例えば、2022年9月9日に岐阜県高山市の山岳道路「乗鞍スカイライン」が災害復旧後の全面開通の前日に再度崩壊しました。
この現場は、20年7月の豪雨で被災した箇所で、仮復旧の状態で21年7月から山側の1車線を使って片側交互通行を続けていました。今回は前回は崩落しなかった部分も、復旧した場所と含めて崩落しています。
現在は前回の復旧の問題点を議論しながら、新たな復旧に向けて準備をしているようです。
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01419/)
災害復旧は特需?
国は令和4年の予算で「災害復旧等」の項目に569億円(前年比1.02倍)を投入しています。「災害復旧等」の予算が自治体の災害復旧の補填のために使用されます。
しかし、近年は感染症拡大や働き方改革、資材確保のために予算が膨れ上がっているようです。
例えば長野県では、2019年の台風19号で被害を受けた千曲川と黒沢川の復旧工事(令和元年公共土木施設災害復旧工事)で、長野県が必要な県議会の議決を経ずに工費増額の変更契約を締結していたことが分かっています。本復旧工事では、復旧労働者や資材の調達難で契約変更が重なり、工費が議決対象の5億円以上になりました(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01411/)。
このような工費の値上げは、実は建設業にとっては良いことなのかもしれません。工事に関わる労働者を雇用するためには賃上げをするほかありません。これらが積みあがることによって、今後の建設業関係者の賃金が上昇していくかもしれません。
このような予想のもと市場を見てみると、実は中小では人件費の上昇などを懸念して賃上げになかなか踏み切れていません。
その理由として長野県建設業協会の木下修会長は以下のように分析しています。
「多くの会員企業は災害復旧工事を特需と捉え、現時点で確保できている事業量と同量の発注は続かないと将来を不安視している。そのため、賞与を積み増す一方で、基本給の増額には着手できないのだろう」
災害が増加し続ける日本。
災害復旧を特需ととらえるのが正しいのでしょうか。