建設業の行政処分と近年の事例

建設業法にはさまざまな規制があり、これらの規制に違反すると不正行為等に対する監督処分が行われます。
監督処分とは、許可行政庁から直接法の遵守を図る行政処分です。
行政処分にはいくつか種類があり、違反の種類や程度により処分が異なります。
処分事案に関しては、事業者が違反と知らずに行われている場合もありますが、知らなかったでは済まされないこともあります。違反の内容と処分を理解しておきましょう。
本記事では、行政処分の種類と内容および近年出された行政処分の実例を見ていきます。
 
 

もくじ

3種の行政処分 各処分の事例  - 「指示処分」になる理由  - 「営業停止処分」になる理由  - 「許可の取消し処分」になる理由 おわりに

 

3種の行政処分

行政処分には3種類あります。軽いものから、「指示処分」・「営業停止処分」・「許可の取消し処分」です。
 
「指示処分」
指示処分とは、法令違反や不適正な事実を訂正をするために、監督行政庁が建設業者に改善命令をするものです。
「営業停止処分」
営業停止処分は、指示処分に従わないときに受けることになります。営業の停止期間は1年以内で決められます。また、営業の停止は「営業の全部」の停止、「営業の一部(ex.公共工事に限った停止など)」の停止に分けられます。※悪質な違反行為の場合、指示処分を経ないで直接、営業停止処分がかけられることがあります。
「許可の取消し処分」
営業停止処分に違反して営業をしたり、不正な手段で建設業の許可を受けたりすると、建設業の許可が取消されます。また、役員や支店長、営業所長などが建設業法に違反して罰則を受けるなどして、建設業許可の欠格要件に該当した場合でも許可は取り消されます。
 

各処分の事例

指示処分、営業停止処分、許可の取消し処分については、処分年月日や処分内容を公衆が閲覧できるように建設業者監督処分簿というものが行政庁に備えられています。また、許可行政庁はその処分内容をホームページ等に公表するように義務付けられています。
各処分について、詳しい事例を確認したい方は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」からご確認ください。
 
「指示処分」になる理由
  1. 施工不良のため公衆に危害を及ぼした、又はその恐れがある場合
  1. 一括下請け(丸投げ)の禁止に違反した場合
  1. 建設業許可を得ないで500万円以上の下請契約を締結した場合
  1. 営業停止、営業禁止されている者との下請契約を締結した場合
  1. 配置される主任技術者が工事の施工管理に関して不適当な場合
  1. 特定建設業者でない者が3000万円以上の下請契約を出した場合
    事例) 2022年12月19日 岡山県 某建設業者
    処分の原因:建設業許可の更新申請に当たり、既に就任していた取締役について建設業許可申請書及び添付書類等の変更届(以下、「変更届」という。)を提出することなく、また、更新申請の添付書類である「役員等の一覧表」及び「許可申請者(法人の役員等・本人・法定代理人等)の調書」に、既に就任していた同じ取締役を記載することなく申請し許可を受けたことが、令和4年9月21日に受理した役員等の就任等に係る変更届により判明した。
    処分の根拠:建設業法第28条第1項(建設業法第5条、第6条及び第11条違反)
    処分の詳細:建設業法第28条第1項の規定による指示
    1. 今回の違反行為の内容及びこれに対する処分内容等について、役職員に速やかに周知徹底すること。
    1. 建設業法及び関係法令の遵守を社内に徹底するため、研修及び教育に係る計画を作成し、役職員に対し、継続的に必要な研修及び教育を行い、違反行為が再び繰り返されることがないよう万全の社内体制の整備に努めること。
    1. 上記(1)及び(2)について、同社が講じた内容を文書により報告すること。(研修会を実施した場合は、その状況写真を添付すること。また、同社において上記以外の措置を講じた場合は、併せて報告すること。)
     
    「営業停止処分」になる理由
    1. 指示処分に該当した者が改善をしない場合、または指示処分に違反した場合
    1. 入札妨害罪・談合罪・贈賄罪・詐欺罪・補助金等適正化法違反・独占禁止法違反・建築基準法違反・税法違反をした場合
    1. 役員または使用人が懲役刑に処せられた場合
    1. 不正な手段で許可を取得した場合
    1. 施工体制台帳を作成していない、又は虚偽の作成を行った場合虚偽申請(完成工事高の水増し申請。入札手続きでの不正行為等)をした場合
     
    事例) 2022年12月14日 大阪府 某工務店
    処分の原因:当該建設業者は、吹田市内の民間発注工事において、建設業法第3条第1項の規定に違反して解体工事業に係る同項の許可を受けないで請負代金が建設業法施行令第1条の2に定める金額以上となる建設工事を請け負った。
    処分の根拠:建設業法第28条第3項
    処分の詳細:建設業法第28条第3項に基づく営業停止処分
    1. 営業停止期間:令和4年12月28日から同月30日までの3日間 営業停止範囲:建設業に係る営業の全部
     
    「許可の取消し処分」になる理由
    1. 経営業務の管理責任者・専任技術者が退職等でいなくなった場合
    1. 不正な手段で許可を取得した場合
    1. 指示処分、営業停止処分に違反した場合
     
    事例) 2022年12月19日 某建設業者
    処分の原因:営業所の所在地を確知することができず、所在地が確知できない事実を公告したが、その公告の日から30日を経過しても被処分者から申出がなかった。
    処分の根拠:建設業法第29条の2第1項
    処分の詳細:
    1. 処分の内容 建設業許可の取消
    1. 取消の範囲 建設業許可の全部
     
    さいごに
    本記事で紹介した行政処分とは別に。司法当局によって行われる刑事処分というものがあります。こちらは罰金が科せられますが、刑事処分を受けることにより、許可取消しに繋がりますので、指示処分を受けた時点で速やかに改めなければなりません。
     
    建設業法に違反をして、罰金を受けてしまうと、欠格事由に該当してしまい、許可を取り消されることになるので注意が必要です。これは、欠格要件に「建設業法に違反し、罰金刑に処せられた日から5年を経過しない者」とあるからです。また厄介なのは、1度許可を取り消されてしまうと、取り消された日から5年間は再度許可を取得することはできません。これも欠格要件に「許可を取り消されてから5年を経過しない者」とあるからです。
     
    法を守り、行政からの指示にはしっかり従うことで、最悪の事態は避けられます。
    健全な経営を心がけましょう。