一級建築士試験はなぜ難しいのか?~試験形式と特徴~

7月23日(日)に一級建築士の学科試験が実施されました。SNSで今年度受験生の受験報告を見かけた方の中には、一級建築士試験は難易度が高いという印象を受けた方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、一級建築士試験の内容と、その難しさの要因を解説していきます。
 
 
目次
  1. 一級建築士の概要
  1. 学科試験
  1. 設計製図の試験
 

1. 一級建築士の概要

 
一級建築士とは、国土交通大臣が認可を行う国家資格です。都道府県知事から認可を受ける二級建築士ではおもに戸建て住宅の設計のみが許可されているのに対し、一級建築士ではあらゆる規模・構造の建築物を設計することができます。
 
そのため、就業可能業務の幅が広いことから、年収も高い傾向にあります。2019年の厚生労働省による調査を基にした計算によると、一級建築士の平均年収は703万円と高水準という結果になったそうです(参考:転職Hacks | 本当に1000万稼げるのか。建築士の平均年収はどのくらい?
 
一級建築士取得を目指す人が多い理由は、このようにより多様な業務に携わることができ、かつ高水準の年収が期待できる点にあります。
 

2. 学科試験

 
一級建築士試験の難易度が高い理由の1つ目は、学科試験の科目別足切り制度です。学科試験は①計画(20点)、②環境・設備(20点)、③法規(30点)、④構造(30点)、⑤施工(25点)の5科目から出題され、総得点が125点になります。合格するためには各科目が合格基準点に達している必要があるため、総得点は合格基準点に達しているのに科目別では1点・2点差で達しておらず不合格、というケースも少なくないようです。
 
また、科目別合格基準点は毎年おおよそ各科目満点の50%程度が合格基準点とされていますが、総合点の合格基準点は約70%です。したがって、学科試験に合格するためには、すべての科目で合格基準点を超えるだけでは不十分で、そこからさらに得点を積み重ねる必要があります。
 
画像引用:資格の学校 TAC | 一級建築士になるには
画像引用:資格の学校 TAC | 一級建築士になるには
 
一級建築士 学科試験の受験者数は毎年約3万人程度で、合格率は15~20%と言われています。ここから、学科試験を通過するだけでも難易度の高い資格であることが分かります。
 

3. 設計製図の試験

 
一級建築士試験の難易度が高い理由の2つ目は、設計製図の試験があることです。この試験では「集合住宅」「美術館の分館」「小規模なリゾートホテル」など毎年異なる課題が7月下旬に公開され、10月上旬に試験が実施されます。
 
今年度(令和5年)の課題は「図書館」で、以下の資料提出が要求されました。
  • 1階平面図・配置図(縮尺1/200)
  • 各階平面図(縮尺1/200)
  ※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。
  • 断面図(縮尺1/200)
  • 面積表
  • 計画の要点等
 
設計製図においては、「敷地の周辺環境に配慮して計画する」「バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する」といった視点を基に設計し、それを分かりやすい表現で説明する能力が評価されます。したがって、実際に一級建築士として業務にあたる際の柔軟な思考力・対応力を備えておく必要があります。
 
学科試験合格者のうち、設計製図の試験も合格する割合は毎年約30~40%とされており、一級建築士になるための最後の難関という立ち位置です。
 
最後に
建設を牽引する存在である一級建築士。高いハードルを乗り越えて業務に携わっていることが分かります。本年度・来年度以降の受験に向けて準備を進めている方、応援しています!
 
参考