【AI活用】施工アシスト技術

働き方改革が求められる建設業界。
休みを増やす、といっても一人当たりが担当する仕事が減らなければ休むことなどできない。国土交通省の調査によれば、週休2日制にあたる4週8休の現場は1割に満たないとも言われ、週休1日が当たり前になっている。
そこで、AIによる施工アシストが働き方改革に役に立つと考えられている。いま大手ゼネコンや研究機関、スタートアップが次々と新しい技術を開発しているため、そのなかでも注目される技術を紹介する。
 

目次

人間型ロボット「HRP-5P」 協調運転制御システム「T-iCraft®」 油圧ショベルの自動掘削
 
本記事で紹介するのは人間型ロボットの「HRP-5P」、複数の建設機械を自動/協調運転を可能にする「T-iCraft®」、油圧ショベルの完全自動運転を目指す株式会社DeepXと株式会社フジタの技術の3点の事例を挙げた。
 

人間型ロボット「HRP-5P」

産業技術総合研究所は人の作業を代替する人間型ロボット、「HRP-5P」の開発を進めている。
「HRP-5P」は大型重量物のハンドリング、搬送が必要な石膏ボード壁面施工を、模擬住宅建築現場でHRP-5P単体で自律的に遂行することが可能である。
(詳細な技術については以下のWebページを参考:https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2018/pr20180927/pr20180927.html)
 
人型ロボットの利点は、大きさが人間とほとんど同じ(身長182xcm、体重101kg)で、ロボットが働くための環境を現場で作り込む必要がほとんどない点である。また、エラーが生じた場合は作業を中断し、端末にメッセージを自動で送信することができるため、常時見守っておく必要がない。
 

協調運転制御システム「T-iCraft®」

大成建設株式会社は2013年から自立型・遠隔操作で作業を行う建設機械「T-iCraft®」を開発している。2021年には、それまで開発をしてきたバックホウ、クローラダンプ、振動ローラの3種類にブルドーザ加え、合計4種で自動運転と組み合わせ協調運転によって生産性向上を実現しつつある。
 
T-iROBOシリーズの各自動建機は、搭載された全地球測位衛星システム(GNSS)と自動運転プログラムにより設定された作業シナリオをそれぞれが自動で実行する。
 
「T-iCraft®」によって連携された建機は、自動で「掘削・積込」、「運搬」、「敷均し」、「転圧」を同時に実施することが可能だ。
(詳細な技術については以下のWebページを参考:https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2021/210209_5072.html)
 

油圧ショベルの自動掘削

熟練の技が必要とされる油圧ショベルの自動化は緊急の課題の一つとして話題となっている。
現在、株式会社DeepXと株式会社フジタは、遠隔操縦装置によって油圧ショベルを自動操作できるAIの開発を進めている。
 
運転席に自動操縦装置を取り付け、リモコンで油圧ショベルを操作したり、運転席のカメラとAIでアームやバケットなどの関節角度を捉え状態を推定したうえで、アームやバケットを動かす経路(パス)をAIが決めることで、レバーを自動操作できる。
完全自動化には至っていないものの、今後10年ほどでの達成をめざしているようだ。
(詳細な技術については以下のWebページを参考:https://www.deepx.co.jp/works/fujita/)
 
おわりに
今回は施工を助けるAI技術の事例を紹介した。
AIという言葉が広く使われるようになって久しいが、建設業界におけるAIの実用化は十分ではない。とくに中小企業がや個人レベルの事業体の場合は今回紹介したようなAIを導入する金銭的・技術的余裕がない場合がほとんどであろう。
 
開発した技術の使用方法が簡易化され、安価に使えるようになれば今後の建設業界はさらに働きやすくなり、若者の流入が増加し、発展していく可能性が高まる。
建設業界におけるAI技術の利用には今後も期待したい。
 
【参考】