下水道の老朽化への対抗ー資本不足問題ー

 
インフラの資本不足問題。
生活で最も重要な「水」にも、少しずつそのしわ寄せが来ています。
下水道事業では人手不足と財政難からの脱却、そして作業員の安全性の確保という観点から、ドローンやロボットが活用されています。
 
本記事では下水道老朽化の実態についてご紹介し、次回はロボットやドローンの活用について、具体的な事例を見ていきます。
 

下水道の老朽化問題

多くの場所で施設の老朽化による修理の必要性と下水道事業の継続した赤字によって、その維持・継続に暗雲が立ち込めています。
 
日本にある、全国の下水道管渠の総延長は約49万km(令和2年度末)。
現在管きょの標準耐用年数50年を経過しているのは、全体延長約2.5万km(総延長の5%)ですが、10年後は8.2万km(17%)、20年後は19万km(39%)と今後は急速に増加し、2046年には老朽管の長さはピークに達します。
 
さらに、全国に約2,200箇所ある下水処理場でも、機械・電気設備の標準耐用年数15年を経過した施設が約2,000箇所(全体の91%)と老朽化が進行しています。
とはいえ、現状では耐用年数を超えていても使用できるからこそ放置されているという現実があります。
 
一方、下水道、とくに管きょの老朽化は大きな問題を引き起こします。
最もよく目に見える問題は、道路の陥没です。
管路施設に起因した道路陥没は毎年2000〜4000件ほど発生しており、令和2年には約2700箇所で道路が陥没しました。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html
(国土交通省 下水道の維持管理「管路施設に起因した道路陥没件数の推移」より)
(国土交通省 下水道の維持管理「管路施設に起因した道路陥没件数の推移」より)
 

老朽化対策とその限界

これらの対策として、国は施設の長寿命化を行っています。
例えば、すでに敷設されている管路内をプラスチック材によって覆い、内面を保護するなどの事例があります。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/crd_sewerage_tk_000135.html
 
しかしながら、長寿命化対策にもいつか限界は来ます。その時には必ず、いま費やしている費用よりも莫大な資金と人手を必要とするでしょう。
さらに、災害大国日本ではどこかのタイミングで災害復興のために資金を使わないといけない日が来るはずです。
 
国や自治体は下水道の調査、管の入れ替え、その他復旧のために十分に備えることができるのでしょうか。
 
国土交通省が公表している令和28年の経費回収率別の地方公共自治体数(試算)を見てみると、困難であると予想できます。
国土交通省の試算によれば、行政人口が5万人未満の自治体のうち、下水道の経費回収率が50%以下の自治体はその約半数(50.4%)と、財政的に安定しない自治体の数は少なくありません。
 
一方で、同じく行政人口が5万人未満の自治体のうち、経費回収率100%を達成できる自治体はそのうち9.8%程度だと考えられています。なお、行政人口5万人以下の自治体は全自治体のうちの3分の2程度と、多くを占めています。
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001358198.pdf
 

老朽化と赤字、そして人手不足へ

下水道施設は老朽化するものの、赤字続きで根本的な解決策が見つからない下水道事業。
追い打ちをかけるように、平成27年には下水道法が改正され、全ての下水管施設を対象に適切な時期に点検等を行うこと、特に、腐食の恐れの大きい箇所は5年に1回以上での点検義務が課されました。
 
老朽化した箇所への点検が必要とされるということは、作業員の安全性にも問題が発生するのです。人体に有害な硫化水素の発生やゲリラ豪雨等による下水道の氾濫といった、実際に死亡者も出るほどの危険があるのです。
 
このような危険な作業を喜んで行う人は多くないでしょう。
あらゆるインフラ業界と同じように、下水道事業もやはり人手不足です。
老朽化と赤字、そして人手不足という打撃を受けている下水道事業ですが、その復活の力となるのは、デジタルやロボットだと考えられます。
 
下水道事業の効率化により利益率を上げ、人の安全を確保しながら、下水管施設の再生をする。
いま日本や世界では、下水管施設のための新たな技術が生み出されています。
 
 
次週は下水道点検を支援するロボットやドローンの事例をご紹介します、