建設業における女性比率 ~現状と支援策~

建設業界は長年、男性が主体とされてきた業界だというイメージを持つ方が多いかと思います。しかし、働き方改革などの動きによって、建設業界における女性労働者を取り巻く環境は近年変化しています。
今回の記事では、建設業界の女性比率の現状を踏まえ、その理由や、女性が働きやすい環境作りの支援策について紹介します。
 
 
目次
  1. 建設業における女性比率の現状
  1. 建設業に女性が少ない理由
  1. 女性参画のための支援策
 

1. 建設業における女性比率の現状

建設業における女性比率は、他の業界と比較しても依然として低水準にとどまっています。
 
総務省のデータによると、全産業での女性比率が40%前半になっているのに対し、建設業の値は10%台にとどまっていることが分かります。
 
グラフ引用 | 男女共同参画局「男女共同参画白書 平成28年版」
グラフ引用 | 男女共同参画局「男女共同参画白書 平成28年版
 
一方、女性比率の推移を見てみると、10年ほど前から上昇傾向にあります。2012年では約14%だった割合が、最近では17%近くまで増加しています。ただし、やはり本来の男女比である50%という値からは程遠い水準となっています。
 
グラフ引用 | WAT REPORT「建設業における女性就業者の比率と職種、地位について」
グラフ引用 | WAT REPORT「建設業における女性就業者の比率と職種、地位について
 

2. 建設業に女性が少ない理由

女性が建設業に参入する際に障壁になっている事柄として、以下のことが挙げられます。
 
  1. 肉体的な負担:建設業は肉体的に過酷な労働が求められることがあります。重い物の運搬や作業現場での長時間の立ち仕事など、女性にとっては負担が大きい場合もあります。
  1. キャリアパスの制約:上層部や管理職に昇進するためには、長い経験やネットワークが求められることがあります。これまでの女性参入の少なさや出産・育児等のライフイベントにより、女性のキャリアパスが限定される傾向があります。
  1. 施工現場の設備不足:男性主体の職場であることから、女性用トイレ・更衣室の設置が為されていないなどの理由で、女性にとって働きづらい環境になりがちだと考えられます。
 
このように複数の要因が重なり合い、女性が建設業界に参入する障壁となっています。
 
このうち、建築士やオペレーターなど、施工現場以外で働くことが主な業種については、女性支援策が充実してきていると言われています。一方で、土工作業員や施工管理技士など、施工現場で働く業種については、3. 施工現場の設備不足の課題が残っており、女性が働きやすい環境の整備が求められています。
 

3. 女性参画のための支援策

これまで述べたような女性労働者の職場環境の改善のために、厚生労働省によって以下のような支援策が設けられています。
 
助成金名:
人材確保等支援助成金 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) 女性専用作業員施設設置経費助成
 
対象事業:
中小元方建設事業主が施工管理を行う工事現場で作業等を行う女性の 建設労働者専用の作業員施設を賃借する事業
 
 
こちらは女性労働者のための建設現場用設備の設置費を助成する取り組みで、対象となる施設は便所、更衣室、シャワー室、浴室の4つとなっています。
 
画像引用 | 厚生労働省「女性作業員施設設置経費助成リーフレット」
画像引用 | 厚生労働省「女性作業員施設設置経費助成リーフレット
 
上の画像で挙げられている設置基準を満たす備品について、①設置2週間前までの計画届の提出、②設置、③支給申請書の提出 のステップを経て助成金を受け取ることができます。
 
受給対象となっている中小建築事業主は、この制度により経済的負担を軽減することで、女性労働環境を改善してくことが期待されています。
 
最後に
今回紹介した助成金のように、建設業界で働く女性を取り巻く環境は少しづつ改善されています。女性がより多様な役割で活躍できるよう、それぞれの事業主が積極的に仕組みづくり・環境整備に取り組むことが求められます。