スマートシティ ~国内外の事例~

ここ数年、いくつかの地方自治体が「スマートシティ」への取り組みを発表しています。スマートシティでは住宅・建築物も大きな役割を果たすことから、建築業界でも注目を集める存在となっています。今回の記事では、スマートシティの基本概念と、海外・日本での先進的な事例を紹介します。
 
 
目次
  1. スマートシティとは
  1. 海外での事例 - Link NYC
  1. 日本での事例 - ウーブンシティ
 

1. スマートシティとは

 
スマートシティとは、ICT(情報通信技術)の活用により、住民の暮らしやすさを実現した都市のことです。
 
内閣府による定義では、主に以下の3点を満たす場がスマートシティであるとされています。(内閣府 | スマートシティ
 
  • 都市・地域の抱える諸課題の解決を行う
  • 新たな価値を創出し続ける
  • 持続可能である
 
具体的には、IoTやAIを導入して人・乗り物の動きやエネルギー使用量などを分析し、そのデータを活用して課題を解決したり新しい技術を生み出したりしている街が、スマートシティであると言えます。
 
このような取り組みによって、エネルギー消費削減、交通渋滞の緩和、犯罪の抑止など、様々なメリットが期待されることから、現在スマートシティという概念への注目が高まっています。
 

2. 海外での事例 - Link NYC

 
既に確立されたスマートシティの事例として、米国ニューヨーク市のLink NYCという取り組みが挙げられます。このプロジェクトでは、住民や観光客の利便性向上を目的とし、使用されていない公衆電話を無料Wi-Fiステーションに変換しています。
 
 
Link NYCの特徴の一つはそのビジネスモデルです。このプロジェクトは広告収入によって賄われていますが、ただ広告をランダムに流すだけではありません。無料Wi-Fiが設置されたWi-Fiステーションに接続された端末のブラウジング履歴から、周辺のターゲット層が特定され、最適な広告がWi-Fiステーション上のスクリーンに流されます。
 
また、Wi-Fiステーションに接続している端末の位置情報を分析することで、人々の時間・場所別の動向を分析することができます。これらの情報の活用が、ニューヨーク市全体でエネルギー削減や渋滞軽減などに繋がるというメリットがあります。
 

3. 日本での事例 - ウーブンシティ

 
日本国内でのスマートシティの事例として、静岡県裾野市のウーブンシティがあります。こちらは、自動車メーカー・トヨタ自動車が、東富士工場跡地に2021年から建築している都市です。
 
 
トヨタ自動車による説明では、ウーブンシティの機能として「アイデアを走らせるテストコースのような街」というものが挙げられています。つまり、人々の生活をより良くするための斬新なアイデアを、街というスケールで実証実験するための場を提供することが、ウーブンシティの目的ということになります。ちょうど、実験中の自動運転車のテスト走行を自由に行うための私有地を作る、という発想と似ています。
 
ウーブンシティでは住宅にもICT技術を搭載し、総括的に住人の生活をより良くする技術・発明のテストをしていくことが計画されています。街全体の動きを絡めた分析は個別の住宅では行えないことから、ウーブンシティが国外を含めた他の都市へノウハウを提供する立場になると予想されます。
 
最後に
今回はスマートシティの概要と事例を紹介しました。NYやトヨタの事例のように、住宅や建築物にIoTやAIを組み合わせて街全体の動向を把握するというのは、スマートシティにおいて定番の手法となっているようです。今後、建築業界においてもスマートシティ構想を見据えた住宅設計などが求められるようになるかもしれません。
 
参考