公共施設の品質管理

道路、公民館、ダムなど、私たちの生活の基盤となっている公共施設。これらの建設・補修は、住居などに対する一般工事とは区別して、公共工事と呼ばれます。公共工事は、国民の共通の社会資本を形成・維持するものとして重要であることから、適切な品質管理が確保されている必要があります。
 
今回の記事では、公共工事の適切な実施を支えている法律「公共工事品確法」と、その中でキーとなる仕組みである発注者支援について解説します。
 
 
目次
  1. 価格競争と品質低下
  1. 公共工事品確法と発注者支援
  1. 発注者支援の具体例
 

1. 価格競争と品質低下

 
近年、公共工事の価格と品質を両立させることが重要な課題となっています。
 
その背景として、厳しい財政状況が原因で公共事業への投資の減少があります。財務省の資料を見ると、ここ数年の公共事業関連費は、ピーク時の平成10年度に比べて半分程度に減少していることが分かります(図1)。
 
この状況下で、工事の受注者側での価格競争が激化し、低価格での工事の引き受けが増加しています。しかし、低価格で受注した分、業者や労働者に負担がかかることで、工事の品質低下が引き起こされる可能性があるとされています。
 
図1 公共事業関連費の推移
画像引用:財務省 | 公共事業関係費をめぐる現状
図1 公共事業関連費の推移 画像引用:財務省 | 公共事業関係費をめぐる現状
 

2. 公共工事品確法と発注者支援

 
価格競争によって公共工事の品質低下が懸念されている状況を改善するために、公共工事の品質確保の促進に関する法律が重要な役割を果たします。
 
この法律は、公共工事の品質の確保を目的として定められている法律です。略称は「公共工事品確法」または「品確法」とも呼ばれます。
 
この法律では公共工事を行うにあたり遵守されるべき基準や手続きが定められています。具体的には、公共工事の入札方法、品質確保のための監理や試験、施工計画の策定、契約の内容、支払いの手続きなどです。また、公共工事を受注する業者に対する資格要件や、入札に関する規定も含まれています。
 
公共工事品確法の中でもポイントとなるのが、発注者支援の仕組みです。
 
公共工事を価格と品質の両面で総合的に優れたものにするためには、工事発注者側が適切に関連事務を行うことが重要になってきます。例えば、仕様書・設計図書の作成、建設コストの算出、適切な設計者・工事受注者の選定などです。
 
しかし、地方自治体によっては公共事業の発注業務を受け持てる技術職員がいない場合があり、この場合、関連業務を設計事務所に委託することが多くなります(図2)。
 
図2 発注者支援に関する調査(平成17年12月 国土交通省大臣官房官庁営繕部による実施)
画像引用:全国営繕主管課長会議 | 適正な公共建築の発注のために 公共工事品確法と発注者支援
図2 発注者支援に関する調査(平成17年12月 国土交通省大臣官房官庁営繕部による実施) 画像引用:全国営繕主管課長会議 | 適正な公共建築の発注のために 公共工事品確法と発注者支援
 
このように関連業務を外部に委託する場合、発注業務フローが複雑化することで、その後の設計審査等を適切に行うのが困難になる場合があります。
 
公共工事品確法では、工事品質確保のため、地方自治体が発注業務を自ら行うことが困難な場合、第三者(国・都道府県や民間団体)の能力を適切に活用することを求めています
 

3. 発注者支援の具体例

 
公共工事実施において、第三者が地方自治体の工事発注を支援する方法には、公共工事の企画段階から保全段階に至るまで多くの種類が存在しています。
 
例えば、第三者機関を含めた品質管理確保などが挙げられます。第三者機関から派遣された職員が、現場に駐在して工事進捗確認・保全検査などを行ったうえで、工事発注者・受注者との定例会議に参加するといった流れで行われます。
 
図3 
画像引用:全国営繕主管課長会議 | 適正な公共建築の発注のために 公共工事品確法と発注者支援
図3 画像引用:全国営繕主管課長会議 | 適正な公共建築の発注のために 公共工事品確法と発注者支援
 
第三者機関の能力を活用することのメリットとしては、工事受注者とは異なる立場からの客観的な監査や、専門知識・技能に基づいた品質確認の強化などがあります。
 
このように、地方自治体による公共工事の品質確保においては、外部団体の能力を活用するべき部分を見極め、適切に公共工事発注業務を行うことが重要となっています。
 
最後に
私たち国民の生活を支える公共施設。財政難状況下で、建設コストを適切に抑えながら品質管理を確実に実施するためには、複数の機関が個々の能力を発揮して協力して工事フローを進めていくことが必要とされています。
 
参考