「相続土地国庫帰属制度」ー所有者不明土地の発生を予防

「所有者不明土地」が発生することを予防するため、相続又は遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
 
この記事では本制度が設置された背景や、制度の概要、活用方法をご紹介します。
 

もくじ 持ち主がわからない家・土地(所有者不明土地)の増加 相続土地国庫帰属制度とは? 本制度の申請方法 おわりに 持ち主がわからない家・土地(所有者不明土地)の増加

近年の所有者不明土地の増加は顕著であり、空き家利用や空いた土地活用がしたくても、制度上不可能でした。
 
所有者不明土地は年々増加し、世帯の保有する空き地の面積は、2008年から2018 年にかけて、632 km²から1,364 km²へと2倍以上に増加しており、空き地率も6.5%から12.4%へと増加するなど、この10年間で、全国の空き地の面積が急増しています。
(2022年 国土交通政策研究所紀要第80号より)
 
土地は誰が所有者かわからなければ、売却や貸し借りなど取引できません。権利者が多く、親族といってもお付き合い自体が疎遠となり、話をまとめるのに苦慮したり、「どこに共有者がいるのか?」がわからなかったりします。
また、郊外や地方では過疎化が進み、不動産価値が減少し、誰も欲しがらず、所有者自体が誰なのかがわからなくなってしまった管理不全の不動産もあります。
 
さらに、不動産の近隣住民が迷惑を被るケースも多々あります。例えば、今にも朽ちそうな築年数が古い建物が建っている土地、不法投棄などがされゴミ屋敷のようになり悪臭が漂っているような土地、草木が生い茂り、虫などがわいている管理不全の土地です。
このような土地では、所有者が誰かわからなければ文句も言えませんし、かといって勝手に立ち入り、対処することもできないので、非常に困った状態に陥ります。
 
これらの問題の解決と、将来発生する所有者不明土地発生を未然に防ぐため、「相続土地国庫帰属制度」が制定されました。
 

相続土地国庫帰属制度とは?

相続土地国庫帰属制度とは、一定の負担金を国に納付すれば土地の所有権が国庫のものとなる、という制度です。
本制度は施行前に相続した土地も対象になります。
一方で、以下のような土地は該当しませんので、注意しましょう。
特に「④権利関係に争いがある土地」は国庫所有が難しいため、権利関係にある親族等との事前協議が必要となります。
 
①建物がある土地
②土壌汚染や埋設物がある土地
③崖がある土地
④権利関係に争いがある土地
⑤担保権等が設定されている土地
⑥一部が他人に使用されている土地
 

本制度の申請方法

相続者及びその関係者が相続土地国庫帰属制度を利用するためには2つのことを行わなければなりません。
 
①承認申請
まずは承認申請をしましょう。
これには、承認申請書の提出と審査手数料の納付が必要です。
受付がされると、法務局担当官による書類審査及び実地調査が実施され、その後、法務大臣による承認の通知が来ます。
 
②負担金の納付
承認の通知は負担金通知とともに手元に来ます。
指定された負担金の額を30日以内に納付すれば、その土地は国庫い帰属されることになります。
上記の申請に必要な負担金は①審査手数料(検討中)、②10年分の土地管理費相当の2つです。
10年分の土地管理費相当額は、管理が相当必要な土地でない限りは約20万円、市街地の宅地(200㎡)では約80万円となっています。
※詳細は土地の種目・面積・周辺環境等で変化しますので、法務局への申請時にご確認ください。
 

おわりに

これまで多額の個人負担があった土地の相続やその維持を、国庫帰属にすることでかなり安価で楽にすることができそうです。
さらに、使われない(使えない)空き地が減ることで活用できる土地も増加し、近年の空き家問題の解決にも一歩進めそうです。
使わない土地がある方は、来年度ぜひこのシステムを使用してください!