【アスベスト訴訟】建設現場におけるアスベストの影響は?
2021年、アスベストに関する大幅な法改正が行われ、建設現場では調査及び報告義務が課せられるようになりました。
アスベストの使用が規制されるようになってからおよそ50年、アスベストを使用した建物は未だ存在しており、アスベストによる健康被害の報告は絶えません。
本記事ではアスベストに関する給付金や、建設業に関わる法改正をまとめました!
アスベストによる健康被害
アスベスト(石綿)は天然の繊維状けい酸塩鉱物で、加工が容易で丈夫なために、以前は建材として頻繁に使用されていました。しかし、繊維が極めて細いため、所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。
研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去、あるいは経年劣化などで飛散したアスベストによる健康被害が1900年代中頃から報告されるようになりました。
1975年から建設工事における使用を原則禁止に、2006年からは労働安全衛生法施行令によって製造・使用等が全面的に禁止されています。
アスベストを吸引することで発生する病気は、中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水などです。

現在、アスベストによる健康被害を訴える方は年々増加しています。
これらの病気はいずれも潜伏期間が15年~40年と長く、発症まで無症状であることがほとんどのため、体調不良になってもアスベストが原因だと思い浮かべることは難しいかもしれません。
これまでで建設業に従事していたことがある方が体調不良を訴えた場合は、アスベストの被害を疑い、労災病院等、専門の医療機関を訪ねましょう。
アスベストへの注目
これまでもアスベストに関する問題は世間を騒がせてきましたが、近年、法改正を含めてアスベストへの規制や対応が強化されています。
2020年、アスベストに関する訴訟が始まりました。この通称アスベスト訴訟では、建設業務に従事していた元労働者党とその遺族が、アスベストによる健康被害を被ったのは、国が規制権限を適切に行使しなかったからであるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟です。
翌年2021年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されています。
この敗訴から約一月後の6月16日には、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が交付され,、2022年1月19日に完全施行されました。
(給付金の詳細については、下記の厚生労働省のページをご確認ください。)
大気汚染防止法
「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が公布される約1年前、2021年4月1日には、大気汚染防止法の規制がレベルが拡大され、アスベストに関する法改正が大幅に行われています。
改正された点は以下です。
1)事開始前の石綿の有無の調査に関する方法の明確化と3年間の保存義務づけ
2)計画届の提出が必要となる建材レベルの範囲拡大
3)石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事に対する規制強化
4)一定規模以上の工事における工事開始前の労働基準監督署への報告義務
調査義務を怠った場合、指導なしの3か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられるようになりました。あるいは、指導を受けた場合、工事を一時停止しなければならなくなります。
さらに、2023年10月1日からは、建物の解体や改修の際に、従事者が石綿を含む建材等の有無を調査する国家資格「建築物石綿含有建材調査者」を取得することが義務付けられます。
アスベストに関しては、これまでの度重なる法改正でますます規制が厳しくなっています。建設業に従事するひとびと、とりわけリフォームや解体に関わる人は情報を常に収集し、学び続ける必要があります。
アスベスト規制に関しては、「ここまでする必要があるのか」という声もありますが、自分だけでなく、周囲の人々を含めた健康を守るためにはこれらの規制を遵守していきたいですね。
また、近年DIYが流行していますが、解体時にアスベストが発生している可能性がありますので、ぜひ専門家を交えた調査の上、解体をするようにしてください。