木造建築に使える「耐火構造」

「耐火構造」とは?
「耐火構造」とは、壁や床などが一定の耐火性能(通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊、および延焼を防止するために必要な性能)を備えた構造のことです。
階数や構造部分の種類で異なりますが、最長3時間の火災に耐える高い性能が求められます。
主要構造となる壁・柱・床・梁(はり)・屋根・階段は、仕様が定められており、国土交通大臣の認定を受けたものでなければなりません。
不燃材料を使用した、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)の両面を耐火被覆した構造、コンクリートブロック造などが主な構造方法となります。
近年の技術の進歩により、木造(W造)でも「耐火構造」への適合が可能になりました。(https://www.ur-net.go.jp/chintai/college/202004/000503.html)
本記事では木造構造で活用される耐火素材をご紹介します!

耐火集成材「FRウッド®」による木造構造

FRウッドは鹿島建設株式会社が東京農工大学、(独)森林総合研究所、 (有)ティー・イー・コンサルティングが共同で開発した、国産スギ材のみを利用した純木質耐火構造部材で国内唯一の技術です。
従来、木造で耐火建築物を実現するためには、石膏ボードなどの不燃材で木を覆うことにより耐火性能を確保する手法が一般的であり、「木造ではあるが、木は“見えない”」というジレンマがありました。
FRウッドは、従来の耐火木造技術とは異なり、木を見せた耐火木造建築物を実現する新技術です。国内で最も多いスギを採用し、「薬剤注入が容易」というスギの特徴を生かし、 柱や梁となる荷重支持部の周囲に難燃薬剤を注入することで耐火性能を確保しています。
燃薬剤を注入した燃え止まり層を配し、火災が起きても、構造を支える内部まで燃焼が進行しない仕組みです。
1時間耐火の大臣認定を取得した耐火集成材FRウッドを使えば、最上階から数えて4層目まで木材現しの空間が実現できます。
また、コンクリート構造や鉄骨造と組み合わせで、木が見える新しい建築物を実現することで、環境負荷低減や低炭素社会の実現、森林資源の有効活用、そして国内林業の活性化が期待できます。
CLT表層利用の耐火壁「T-WOOD®️TAIKA」
大成建設株式会社は、国内で初めて1時間耐火の大臣認定を取得したCLT表層利用の耐火壁「T-WOOD®️TAIKA」を開発しました。
建築物の火災に対する安全性を確保しつつ、木質感豊かな建築空間の創出が可能となるとともに、木材の利用促進による脱炭素社会への貢献が期待できます。
木質仕上げの建築空間には木材特有の温もりがあり、意匠性にも優れているというメリットがあります。
しかし、木材を部材の表層に利用した場合、火災による木材部分の燃焼が火災を長期化させる可能性があり、結果、構造部材である内部の鉄骨柱などが耐力を維持できず、崩壊してしまう可能性がありました。
「T-WOOD®️TAIKA」は壁部材としてCLTを表層利用しながら、CLTによって耐火被覆材(けい酸カルシウム板)を挟み込む構造を採用することで、長時間の火災に耐えうる木質耐火壁です。
耐火壁を建築物に積極的に適用し、意匠性に優れた木質仕上げの建築空間を提供していくとともに、木材の利用促進により脱炭素社会の実現に貢献できそうです。
おわりに
木造建築の需要が高まる中、耐火技術は重要さを増しています。
今後、こういった技術を使って木材利用が増加することを期待するばかりです。