建設業の人材確保と助成金利用の事例紹介

人手不足が慢性化している建設業界。 担い手を確保しろ、と言われても何から手を付ければよいのでしょう? 本記事では、建設業で実施されてきた人材確保・育成のために行われた取り組み事例を紹介します。

目次

建設業を知ってもらう
助成金の使用事例
まとめ
 
建設業を知ってもらう
人手不足を解消するためには、次世代の若者に建設業を知ってもらったり、体験してもらったりすることが必要です。
建設系学科の工業高校生1092人に対して行った、自身と建設業との接点に関するアンケートでは、卒業後に建設業に進学したいと回答した63%の学生の半数以上が、「親族の影響」であったり、「身近な建設現場を見て」建設系の工業高校に進学することを考えたといいます。 同時に保護者の建設業のイメージ改善のため、職場体験をしてもらうことも若手の担い手を確保するためには肝要です。
建設業を知ってもらい、実際に体験してもらうようなイベントの先行事例を紹介します。
[参考]
 
出前授業と職業見学会
2020年、山口県では小学生から高校生までを対象に、建設業の社会的役割や魅力を伝える授業を行っています。
出前授業を開催したのは、やまぐち建設21の会、山口県建築協会、山口県建設業協会です。授業は経営者や若手就業者が行い、自らの言葉で仕事の苦労ややりがいを伝え、彼(女)らがロールモデルとなるように授業を実施しました。
また、2019年には東京都で、2020年には山口県で建設系の学生を対象に建設工事現場見学会・屋外実習を実施しています。見学会は実際の工事現場の魅力や楽しさ、仕事内容を知ってもらい、それと同時に働く人と直接触れ合うことで、働く姿をイメージしてもらうことで将来の担い手を増やすことを目的に実施されました。
 
ほかにも各都道府県、あるいは各社で建設業に関する授業や見学・実習を実施したり、建設業におけるICT活用、女性活躍に関連するイベント等を実施しており、積極的な情報発信もしているので、チェックする価値ありです!
 
 
 
助成金の使用事例
厚生労働省と国土交通省は建設業の人材確保・育成に向けて予算を設定し、各業界に助成金を出しています。 令和4年その予算は人材確保、人材育成、魅力ある職場づくりという3つのレベルに分けられ、各部門で数千万円〜数億円を割り当てています。(詳細は厚生労働省から出ているこちらのPDFをご覧くださいhttps://www.mhlw.go.jp/content/11606000/000825678.pdf)
 
予算が割り当てられている、といっても実際にどのように国や都道府県等から出ている助成金を使用するのか、イメージしづらいと思います。 以下ではいくつかの事例を取り上げ、助成金をどこで利用できるのかの参考にしていただきたいと思います。
 
人材確保・育成の事例
「職業訓練法人広島建設アカデミー」
広島県広島市では、福井建設(株)を中心に、地域建設業の発展のため「職業訓練法人広島建設アカデミー」を設立しました。広島建設アカデミーでは、工業高校生を対象に技能体験講座を実施し、建設業に対する理解を深め、入職後のミスマッチを防ぎ、人材を確保をしています。また、アカデミーの会員となっている企業に入職した新人に対して職業訓練を実施することで配属後の戸惑いを回避したり、同期生との連帯を強めることで定着率を向上させています。
広島建設アカデミーは、認定職業訓練助成事業費助成金(運営費)と建設労働者確保育成助成金の経費助成が受給できたり、アカデミーの会員企業はキャリア形成促進助成金と建設労働者確保育成助成金(賃金助成)が受給できたりするので、助成を活用することで金銭的負担が減らせています。
(「事例04 工業高校等への出前講座と入職後の職業訓練を実施」https://genba-go.jp/jinzai/pdf/04.pdfより)
 
「鈴木職業訓練校」
東京都文京区にある株式会社鈴木組は、地域や出身学科を問わず幅広く社員として採用し、人材を確保しています。入職してからも人材の定着促進のため、固定月給制や週休2日制度、充実した福利構成を提供しています。さらに、入社後すぐに社内の全寮制の鈴木職業訓練校で全寮制のもとに訓練を実施し、将来の幹部候補を目指して、施工計画や施行管理もできる架設技能工の育成に努めています。
この訓練校の年間費用は、賃金・経費合わせて約 4,000 万円かかり、そのうち 1/3 を助成金で賄っています。
(「事例09 安定した給与体系と長期職業訓練で若手人材の将来設計をサポート」https://genba-go.jp/jinzai/pdf/09.pdfより)
 
なお賃金助成は研修生の賃金分だけで、学校の運営などに関わっている(株)鈴木組の社員の人件費は対象外です。また助成には限度額が設定され、計上できない費用も発生しています。
本記事では2事例しか紹介しませんでしたが、他にも事例は数多くあります。一般財団法人建設業振興基金から「建設業における人材確保・育成に関する取りくみ事例」という調査報告が出ていますので、こちらもぜひチェックしてみてください!
 
 
まとめ
今回は建設業の人材確保のための活動事例や助成金を利用した取り組みについてご紹介しました。
建設業を知り、体験し、興味を持ってくれた若者を離さない!
そのためにできることはたくさんあるようです。
建設業界全体で人材確保・育成に努めましょう。